セルフマッサージ編

イヌにも「肩コリ」ってあるの?【肩コリからくる「姿勢の乱れ」と「歩きにくさ」を予防する】

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「肩コリ」はヒトにはよくある症状で、肩コリから頭痛になったり肩が上がらなくなったり…肩コリに悩まされている方も多いかと思います。

長時間デスクワークやスマートフォンの使いすぎ、寝違えなどで肩コリになることがありますが、イヌにも同じような肩の痛みがあるのでしょうか?

実は、イヌには「肩コリ」という概念はありませんが、イヌはヒト以上に肩の周りの筋肉をよく使っています

その理由は、イヌが前足を主に使っているためです。また、肩甲骨は非常に柔軟であり、それを支える筋肉も発達しています。さらに、運動の力学的な観点からも、肩の周りの筋肉を頻繁に使っています。

つまり、「肩コリ」という概念はイヌには存在しないものの、肩の痛みやコリを引き起こす要素は犬にも多く存在するのです。

この記事を書いたひと

ほっとハンド
ほっとハンド
Profile
現役の理学療法士(17年のキャリア)

日本ペット栄養学会ーペット栄養管理士

分子整合医学美容食育協会ーファスティングマイスター

愛犬ちゃんの健康を守るために知っておきたい

イヌの肩こりになりうる要因

姿勢による筋肉への負担

イヌは四つ足で立っていて、後ろ脚と前脚にかかる負担割合が異なります。

イヌは体重の重心割合は 後ろ脚3~4 : 前脚6~7 といわれています。

イヌは大部分を前脚で支えるため、特に前脚と背中の筋肉に負荷がかかります。不適切な体の使い方や長時間の同じ姿勢、または運動不足によって、犬の筋肉は緊張し、疲労がたまることがあります。

構造による筋肉への負担 ~イヌには〇〇がない?~

筋肉への負担は、骨の構造によって大きく異なります。まずは、イヌとヒトの骨の違いから説明しましょう。

ヒトには鎖骨という骨がありますが、イヌには鎖骨はありません

鎖骨の役割を3つ紹介
  • 手を正確にブレずに動かす
  • 固定性を出して支えとして働く
  • 衝撃を吸収してくれる

手を正確にブレずに動かす

ヒトの鎖骨は肩甲骨と胴体をつなぐ役割を果たしており、手の運動や姿勢をサポートしています。鎖骨によって手が固定され、ブレずに正確な動きが可能になります。

一方、イヌには鎖骨が存在しないため、手の動きは不安定になってしまいます。木登りを例にあげると、ヒトは鎖骨があるために、木の枝につかんだ手の力が身体にしっかり伝達され、手に身体を引き付けることができ、木登りができます。しかし、イヌには鎖骨がないため手から胴体へ力が伝達しにくいため、木登りが苦手なのです。ちなみに、ネコが木登りが上手なのは、ネコには鎖骨があるからなのです。

イヌは手を使って地面を掘ったりお手をしたりすることはできますが、手の動きが人間ほど正確ではありません。

固定性を出して支えとして働く

ヒトの肩甲骨と胴体は鎖骨で連結されて固定されていますが、イヌには鎖骨がないため、体重を支えるために筋肉の負担が多くなります。

ヒトの鎖骨は手と胴体支えるポールのようなものですが、イヌにはそのポールがないため、筋肉に頼って体重を支えなければなりません。そのため、イヌの肩甲骨周りの筋肉にはかなりの負担がかかります。イヌの肩甲骨は非常に柔軟で広範囲な運動が可能ですが、その分、運動を制御するための筋肉も非常に発達しています。

しかし、筋肉のバランスが悪かったり、イヌの体重に対して筋肉が弱かったりすると、肩の周りの筋肉に負担がかかりやすくなります。

ですから、イヌの健康のためには適度な運動と体重管理が重要なのです。

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衝撃を吸収してくれる

鎖骨はクッションの役割を果たすエアバッグのような存在と言えます。

ヒトが腕や肩に外部からの衝撃を受けたとき、鎖骨はその衝撃を分散し、吸収してくれます。これによって、肩関節や胸郭を保護する役割を果たしているのです。車のエアバッグが衝撃を和らげ、乗員を守るように、鎖骨は身体の一部を守るクッションの役割を果たしているのです。

そして、この柔軟性と運動の幅を活かすことで、骨や他の組織へのダメージを最小限に抑える効果があります。

例えば、走っていて転び手をついたときや重い物を持ち上げるとき、私たちの身体には衝撃がかかりますよね。鎖骨の柔軟性と吸収能力があるおかげで、その衝撃を和らげ、身体全体にかかる負荷を軽減してくれるのです。

しかし、イヌは鎖骨がないため、この「衝撃吸収」を筋肉で補う必要があります。例えば、イヌがジャンプしたり、走ったりするとき、鎖骨がない分、筋肉が衝撃を吸収しなければなりません。

そのため、イヌの筋肉には人間よりも大きな負荷がかかるのです。まるでクッションの代わりに、イヌは自身の筋肉をエアバッグのように使って身体を守っていると言えます。

鎖骨の役割が衝撃吸収にどれほど重要なものかが分かります。ヒトは鎖骨によって外部からの衝撃を和らげ、身体を守ることができますが、イヌには鎖骨がないため、筋肉がその役割を補っているのです。

歩きによる筋肉への負担(肩甲骨~首回り編)~歩く、走るためによく使う筋肉を知ろう~

ヒトでもイヌでも歩くときは脚を前に出して、重心を脚にのせて、脚を後ろにけりだして前に進みます。脚を前に出すには、脚の前にある筋肉が働くことで前に出ます。逆に脚を後ろにけりだすときは、脚の後ろの筋肉が働きます。

イヌの前脚に関しては、肩甲骨までが脚として動いています。

肩甲骨周りの動きと筋肉の働きを以下の図を参照してみてみましょう。

肩甲骨まわりの筋肉が複雑に働き合ってますが、ポイントは脚を前に出すときはピンクの矢印の筋肉が、後ろにけりだすときは赤の矢印が働くということ。

イヌでは特に脚を後ろにけりだす力が強いため、赤の矢印にある筋肉が疲労しやすく、硬くなりコリやすくなります。

愛犬ちゃんの健康を守るために知っておきたい

イヌの肩回りの筋肉を知ろう

肩回りの筋肉を図を参照して確認してみましょう。

愛犬ちゃんの健康を守るために知っておきたい

イヌが肩コリになるとどうなるのか

姿勢の崩れと歩きへの影響

イヌの肩回りが硬くなる原因はさまざまです。例えば、高齢によって筋力が衰えることや、筋肉の緊張、犬種による体格の違いなどが考えられます。これらの要因が重なると、肩から首にかけての筋肉が硬くなり、動きが制限されてしまいます。

肩から首まわりの筋肉のうち、特に前進するための筋肉が硬くなりやすい傾向があります。前進する際には、肩甲骨の上に付着している筋肉(僧帽筋)と肩甲骨の下に付着している筋肉(広背筋)が重要な役割を果たします。*下図参照

肩甲骨の上にある筋肉は、後頭部まで伸びています。肩甲骨の上部が前方、上方に引きつけように働きます。ヒトで例えると、肩をすくめるように働きます。

肩甲骨の下にある筋肉は、骨盤の方まで伸びています。肩甲骨の下部は後方に引きつけるように働きます。

この2つの筋肉の作用によって、肩甲骨は前方に転がるような動きをします。

また、肩甲骨の下にある筋肉は、骨盤の方まで伸びているため、この筋肉が収縮すると身体は丸くなるように働きます

この筋肉が硬くなると、身体の柔軟性が低下し、伸び縮みしづらくなります。その結果、前脚を前に出しにくくなったり、後ろ脚を後ろにけり出しにくくなったりして、歩行のスムーズさや速度が低下します。

肩回りの筋肉が硬くなると、イヌは自然な動きを制限されてしまいます。体の伸縮性が低下するため、普段の動作が制約され、日常生活に支障をきたすことがあります。また、動きにくさが増すと、徐々に散歩や遊びに対する興味を失い、活発さや快活さを失っていくこともあります。

そうならないためにも、肩回りの筋肉のケアが重要です。定期的なストレッチやマッサージを行うことで、筋肉の緊張を解きほぐし、柔軟性を保つことができます。

また、適度な運動や適切な姿勢を維持することも大切です。日頃から犬の身体の健康を気遣い、肩回りの筋肉を柔らかく保つことで、愛犬ちゃんの健康と生活の質をサポートしてあげたいですね。

愛犬ちゃんの健康を守るために知っておきたい

イヌの肩回りが硬くなっていたらやってあげたいこと

「コリ」をみつける

筋肉は指先でさわると圧が一点に集中して不快な刺激となるので、包み込むように全体で優しくさわってあげると良いでしょう。

「コリ」を触わると以下のような感覚、感触があります。

  • 硬さ: コリを触ると、通常の筋肉よりも硬く感じる
  • 緊張感: コリは緊張している筋肉の結果であり、触るとその緊張感が伝わる。張っているような感じ。
  • 密度: コリは通常の筋肉よりも密度が高く、指で触れるとよりしっかりとした感触がある。ボリュームがありもっこりした感じ。
  • 滑らかさ: コリは一般的には滑らかな表面ではなく、指先が少し引っかかる感じがある。
  • 不快感: コリを触ると、痛みや不快感を伴うことがある。
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効果的なマッサージ方法

まず最初に全身を「さする」。さすることでリラックスする効果があります。リラックスしていない状態でにいきなり「コリ」に対してマッサージしようとすると痛みを伴うので注意。

マッサージのポイント
  • まずは全身をゆっくりとさする。
  • 全身をさすり終えたら、肩~首回りを再度「さする」。
  • リラックスしてきたら、少しずつ圧をかけていく。
  • 筋肉よりも表面にあるヒフから動かしてあげる。
  • マッサージしている部分の血行がよくなり温かくなってきたら、筋肉の走行にそって、軽く圧をかけながら筋肉の上を滑らせるようにさすっていく。
  • ヒフをやさしく包み込むようにつまんでみる。
  • 柔軟性があれば、ヒフをつまんで持ち上げて滑らせたり揺らす。
  • 嫌がったり、痛がったりしたらやめる。

*あまりにも硬かったり痛がったら、触ったまま待つのもあり。触ったまま待っていると徐々に温かくなってほぐれる効果があります。

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まとめ

肩が硬くなる理由と動きへの影響、肩コリ予防のポイント
  • イヌには肩コリという概念はないが肩回りの筋肉に負担がかかりやすい
  • 肩回りの筋肉が硬くなる理由として、前脚重心であること、鎖骨がないため筋肉に負担がかかること、歩くときに肩回りの筋肉をよく使うことが挙げられる。
  • 肩回りの筋肉が硬くなると姿勢と歩きに影響がでる。
  • 特に身体が丸くなり歩きにくくなる
  • 肩コリを見つけるポイントは、てのひら全体でやさしく包み込むように触りながら「硬さ、緊張感、滑らかさ」などを感じ取る。
  • 肩コリをみつけたら、まずはさする。表面が温かくなってきたら少しずつ圧を入れていきマッサージしてみる。

大切な愛犬ちゃんが年をとっても健康的に歩けるよう日頃のスキンシップとケアをやってあげたいですね。では、よき愛犬ちゃんライフを。

さいごに

動物の身体は奥深いものです。そんな身体の「奥深さ」を理学療法士という視点、ペット栄養管理士、ファスティングマイスターという観点からわんちゃんとヒトを結びつけて、家族みんなが健康に!といったテーマでブログを書かせて頂こうと思います。

興味のある方は今後ともよろしくお願い致します。

ご質問やご意見ある方は以下からお問い合わせください。

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