セルフマッサージ編

イヌの前脚マッスルマップ【前脚の筋肉の役割~ケアの方法】

daisaku2010ok

前脚の筋肉は愛犬の健康に欠かせない重要な要素です。

なぜなら、日常的によく使われていて、体重を支えることに関しては後ろ脚よりもよく使っているからです。

においをかいだり、ご飯を食べたりする動作も前脚で踏んばって頭や身体を支えています。それだけよく使っている前脚の足先は、後ろ脚の足先よりも大きくなっているのも特徴のひとつ。

本ブログでは、愛犬ちゃんの身体に対する理解を深め、愛犬ちゃんの健康をサポートする方法を前脚に特化した内容でお伝えします。

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この記事を書いたひと

ほっとハンド
ほっとハンド
Profile
現役の理学療法士(17年のキャリア)

日本ペット栄養学会ーペット栄養管理士

分子整合医学美容食育協会ーファスティングマイスター

イヌの前脚マッスルマップ

日頃よく使う前脚の筋肉を理解しよう

重心割合

平坦な場所では、イヌの重心は後ろ脚前脚では 3~4 : 6~7 の割合で前脚の方に重心がかかっています。そのため、前脚にかかる筋肉の負担は後ろ脚よりも大きいものになります。坂道では後ろ脚の方に負荷がかかり、下り坂では前脚にさらに負荷がかかります。

立ち姿勢で使う筋肉

イヌの立ち姿勢をみてみると、腕の関節は伸びきっておらず、曲がった状態をキープしていることが分かります。

ヒトで例えると、腕立てふせの肘を曲げている途中で止めている状態をキープしていることになります。想像するだけでつらそうですね。。

立ち姿勢で使う筋肉を簡単にまとめてみました

*その他、肩甲骨から首や背中まわりの筋肉も良く使われていますが、線だらけになってしまうので割愛させていただきます。

歩くときに使う筋肉

歩きのポイント
  • イヌが歩くときの前脚と後脚の役割が違う
  • 後脚は推進力を生み出す作用が多い。
  • 前脚はブレーキ作用と衝撃吸収作用に関係している。
  • 後脚がうまく使えない時は、後脚に代わって前脚が推進力を生み出す。
  • イヌには鎖骨がないため、衝撃を吸収するのに筋肉にかかる負担が大きい
  • 歩く速さが速くなるほど筋肉の活動も大きくなり、収縮するタイミングも変わってくる。
  • 衝撃吸収は筋肉だけではなく、全身の骨格をうまいこと使ってエネルギーを分散している。→いろんな関節にも負担がかかる。
  • 歩くには、筋肉の力、柔軟性、タイミングと骨格の柔軟性が必要。

歩く周期で使う筋肉も違ってくるので、歩行周期から説明していきます

イヌの歩行周期を4分割にしてみました。指先が地面についている期間を立脚期、指先が地面から離れている期間を遊脚期といいます。立脚期も立脚初期、立脚中期、立脚後期と3分割で解説します。

それぞれの周期の特徴を簡単にまとめてみました。

前脚の立脚初期では衝撃を吸収するのに各関節がわずかに「曲がり」ます。このわずかに「曲がる」ことでクッション作用が働き、一か所に負担がかからないようにしてくれます。イメージとしては曲がるよりも「たわむ」感じ。車のサスペンションのような作用だと思っていただければと。

*衝撃を吸収するために矢印で示した筋肉が良く働く。

前脚の立脚中期では、立脚初期から関節の角度はあまり変わっていません。前脚を後ろに蹴りだすのには肩甲骨が前に転がるように動きます。

*肩甲骨を動かすピンク色の矢印で示した筋肉と各関節を曲げたままキープする筋肉が働く。

前脚の立脚後期は、前に進むために脚を後ろに蹴りだす期間のことをいいます。肩甲骨の前に転がるような働きをする筋肉(ピンク色の矢印の筋肉)と各関節を伸ばす筋肉が働きます。

*肩甲骨を動かすピンク色の矢印の筋肉と各関節を伸ばす筋肉が働く。

前脚の遊脚期は、脚を前に振りだす期間。指先を引きずらないように各関節を曲げて持ち上げる筋肉が働きます。前脚を持ち上げたまま、肩甲骨が立脚期と逆の動きをして前脚を進行方向に振りだします。遊脚期の最後は、持ち上げて曲げた脚を伸ばして立脚期に備えます。

*肩甲骨を動かすピンク色の矢印の筋肉、各関節を曲げる筋肉が働く。次いで、前脚を伸ばす筋肉が働く。

イヌの前脚マッスルマップ

イヌの前脚の筋肉を知ろう

棘上筋 棘下筋 三角筋

上腕三頭筋 上腕二頭筋 上腕筋

橈側手根伸筋 尺側手根伸筋 総指伸筋

全部同じに見えるので下図を参照ください。

橈側手根屈筋 尺側手根屈筋 浅指屈筋 深指屈筋

イヌの前脚マッスルマップ

イヌの前脚が硬くなっていたらどうなるの?

前脚が硬くなっていたら、前脚の大事な機能である「衝撃吸収」がうまくできなくなります。

衝撃が吸収できなくなると…

  • 歩きに影響がでる。具体的にいうと、「歩くスピードが遅くなる」、「歩きたがらなくなる」 → 体力が落ちる → さらに歩かなくなる… の悪循環に。。衝撃が大きくなるということは、各関節への負担も高くなり、骨の変形痛みにもつながってしまします。
  • 姿勢にも影響がでる。例えば、前脚も身体も伸びにくくなるため、「背中が丸くなってくる」、「頭が持ち上がりにくくなる」、「下ばっかり見ているような姿勢になる」などが挙げられます。

「最近走らなくなってきたなぁ」「下ばっかり向いているように感じる」「身体が丸くなったように感じる」と思ったら前脚の硬さも関係しているかもしれません。

愛犬ちゃんにやってあげたい

イヌの前脚が硬くなっていたらやってあげたいこと

「コリ」をみつける

筋肉は指先でさわると圧が一点に集中して不快な刺激となるので、包み込むように全体で優しくさわってあげると良いでしょう。

「コリ」を触わると以下のような感覚、感触があります。

  • 硬さ: コリを触ると、通常の筋肉よりも硬く感じる
  • 緊張感: コリは緊張している筋肉の結果であり、触るとその緊張感が伝わる。張っているような感じ。
  • 密度: コリは通常の筋肉よりも密度が高く、指で触れるとよりしっかりとした感触がある。ボリュームがありもっこりした感じ。
  • 滑らかさ: コリは一般的には滑らかな表面ではなく、指先が少し引っかかる感じがある。
  • 不快感: コリを触ると、痛みや不快感を伴うことがある。
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マッサージ方法

まず最初に全身を「さする」。さすることでリラックスする効果があります。リラックスしていない状態でにいきなり「コリ」に対してマッサージしようとすると痛みを伴うので注意。

マッサージのポイント(前脚編)
  • まずは全身をゆっくりとさする。→愛犬ちゃんにリラックスしてもらう。
  • 全身をさすり終えたら、肩~前脚の指先までを再度「さする」。
  • 筋肉よりも表面にあるヒフから動かしてあげる。
  • マッサージしている部分の血行がよくなり温かくなってきたら、筋肉の走行にそって、軽く圧をかけながら筋肉の上を滑らせるようにさすっていく。
  • ヒフをやさしく包み込むようにつまんでみる。
  • 柔軟性があれば、ヒフをつまんで持ち上げて滑らせたり揺らす。
  • 嫌がったり、痛がったりしたらやめる。

*あまりにも硬かったり痛がったら、触ったまま待つのもあり。触ったまま待っていると徐々に温かくなってほぐれる効果があります。

上腕三頭筋(オレンジ色で示した筋肉)のマッサージに関しては筋肉をつまむことができます。筋肉をつまむときは指先でつまむのではなく、指の腹の部分でつかむようにすると心地よいかと思います。

手根屈筋もつまんでマッサージしてあげましょう。手根屈筋は体重を支えるのによく使う筋肉なので、筋肉の「ハリ」を感じることがあります。

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イヌの前脚マッスルマップ

まとめ

ポイント
  • イヌの立ち姿勢は、関節を曲げた状態をキープしている。
  • それに加えて、前脚重心であるため、前脚の筋肉には負担がかかる。
  • イヌの歩行は後ろ脚が推進力を、前脚はブレーキ作用と衝撃吸収をしていて、役割が異なる。
  • 衝撃吸収はとっても重要な役割。
  • 前脚が硬くなると歩きたがらなくなったり、身体が丸くなったりする。
  • 前脚のマッサージをしてあげることで歩きをスムーズにする効果もある。
  • マッサージはやさしくさすり、血行が良くなってから筋肉をほぐしていく。

激しい運動をよくするイヌほど前脚が硬くなります。また、高齢になってくると自然と硬くなってくるので、少しでもマッサージしてやわらかい脚をキープしたいですね。

少しでも役にたてればと思います。では、よき愛犬ちゃんライフを。

参考文献

Activity of extrinsic limb muscles in dogs at walk, trot and gallop
歩行の四肢運動様式に関する研究
キネジオロジイの立場からみた犬の姿勢維持と歩行運動
歩行評価活かす相分け概念の導入とその応用

さいごに

動物の身体は奥深いものです。そんな身体の「奥深さ」を理学療法士という視点、ペット栄養管理士、ファスティングマイスターという観点からわんちゃんとヒトを結びつけて、家族みんなが健康に!といったテーマでブログを書かせて頂こうと思います。

興味のある方は今後ともよろしくお願い致します。

ご質問やご意見ある方は以下からお問い合わせください。

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