愛犬ちゃんの【ヒフを守るために知っておきたいこと】〜ヒフ×脂肪酸×亜鉛について〜
愛犬ちゃんのヒフが弱く何かにつけてヒフが赤くなることありませんか?
我が家の愛犬ちゃんはフレンチブルドッグなのですが、犬種的にもヒフが弱くてすぐに赤くなってしまいます。幸いにもひどくならずに済んでいますが。
ヒフの健康を保つためには「ヒフの防御を高めてあげる」ことが大切です。
「ヒフの防御を高めてあげる」ためには、ヒフを構成している栄養素が過不足なくあること、ヒフのターンオーバー(ヒフの生え替わり・代謝)ができている事がとても大事。
今回の内容は前半でヒフを構成している栄養素とターンオーバーの仕組みについて、後半でヒフの健康を保つために大事な栄養素である「必須脂肪酸」と「亜鉛」について解説してまいります。
この記事を書いたひと
犬の整体師
日本ペットアロマホームケア協会認定アドバイザー
日本ペット栄養学会ーペット栄養管理士
分子整合医学美容食育協会ーファスティングマイスター
ヒフを構成している栄養素
- 角質細胞・被毛の主な構成成分
タンパク質(90%以上)
- セラミドの細胞膜の成分
必須脂肪酸(オメガ6脂肪酸)
- ヒフや被毛のツヤ
ビタミンE
- ヒフのターンオーバーを促進
亜鉛 ビタミンA
ヒフは3つの構造に分かれていて、表層から表皮、真皮、皮下組織から成り立っています。最大の臓器といわれ、体重の約8%を占めています。
上図は表皮。表皮は0.12mm程度の厚さで角質層はさらに薄い0.02mmの薄い膜(サランラップくらい)。この角質層が「ヒフの防御力を高める」「肌の潤いを与える」という役割をしています。
タンパク質はヒフや被毛を構成・維持するのに使われる主な材料です。タンパク質が足りないと脱毛やフケ、ヒフのべたつき(あぶらっぽい感じ)、臭い、かゆみの原因にもなります。
セラミドが減少してしまうと・・
角質細胞の間にセラミド(保湿成分)がしきつめられている。
このセラミドが減少すると保湿機能がなくなり→乾燥した肌となる。
乾燥肌になると、荒れた肌からアレルゲンが侵入しやすくなる。
これがアトピー性皮膚炎の原因。
ヒフや被毛への「栄養が行き届かない」「栄養が不足してしまう」状態になると、ふけ、かゆみ、脱毛といった症状におちいりやすくなります。
ターンオーバーの仕組み
ターンオーバーを一言でいうと「ヒフの生え替わり」のこと。
ヒフの基底層という下の層で新しいヒフが生まれて、表面の肌へと成長していく。最後に垢となって排出される。
犬のヒフはヒトよりも代謝が早く、4週間程度で生え替わるといわれている。
このヒフのターンオーバーに使われる栄養素が亜鉛やビタミンA。
必須脂肪酸×ヒフ
必須脂肪酸とは体内で合成できない、合成できてもほんのわずかな量しかできない物を『必須脂肪酸』といいます。
必須脂肪酸はオメガ3とオメガ6に分類され、オメガ3にはα-リノレン酸、EPA、DHA、オメガ6にはリノール酸、アラキドン酸といった種類の脂肪酸があります。
必須脂肪酸の中でもオメガ6脂肪酸はセラミドの代謝に関わっていて、ヒフの潤いを保つのに重要な役割があります。オメガ3脂肪酸とのバランスが大事で、同時に摂取することで炎症を抑えたり、免疫機能を高めるといった効果があります。
- オメガ6ヒフのバリア機能の向上
- オメガ3抗炎症作用
- 被毛の改善 など
必須脂肪酸の研究
ヒトの研究
対象:アトピー性皮膚炎と診断された16名。
研究内容:魚由来のEPA、DHAを12週間投与研究。
結果:40%の症例(16人中6名)で治療薬の使用量が減少。
参考文献
エイコサペンタエン酸・ドコサヘキサエン酸の抗アレルギー作用について
イヌの研究(イヌの痒みを伴う皮膚疾患に対する研究)
対象:アトピーやアレルギーが確認された16頭のイヌ。
研究内容:オメガ3脂肪酸であるEPAを毎日1回6週間摂取。
結果:EPAを摂取した群は痒み、脱毛、被毛の性質が有意に改善
参考文献
Double‐blinded crossover study with marine oil supplementation containing high‐dose icosapentaenoic acid for the treatment of canine pruritic skin disease
ヒトにもイヌにも共通していえること
- 研究期間が長く、すぐに結果が出ない
- 2〜3ヶ月続けることが大事
- 血中濃度は上がるが細胞まで行き届くのに時間がかかる
必須脂肪酸の多い食べ物
- マグロ
- サンマ
- イワシ
- サバ
- ブリ
- えごま油
- 亜麻仁油 など
サプリ
とはいっても、必須脂肪酸をバランスよく摂取するのは難しく、日頃の食事に加えて魚やえごまを与え続けることは難しいことです。そんな時はサプリの力を頼るのも一つの手段。
亜鉛×ヒフ
亜鉛は5大栄養素である「ミネラル」の一つ。
亜鉛は、新しい細胞を作る「細胞分裂」をサポートする働きをしています。タンパク質の合成にも補酵素として働くほか、DNAの合成にも関わっています。また、炎症や傷の回復させるときにも使われています。
亜鉛はビタミンAの活性化にも関与しています。ビタミンAは抗酸化作用があるため免疫力を高める効果があります。
亜鉛の研究
ラットの研究
対象:亜鉛を投与していない群と事前に投与した群に分ける。
研究内容:人工的にヒフに傷をつけて治癒過程を比較する。
結果:事前に投与した群は傷口の炎症が弱まり、ヒフの再生が早まった。亜鉛を使用することで癒着プロセスの期間が短縮されることを指摘しています。
創傷治癒過程における生体内亜鉛量の変動
イヌの研究
対象:慢性のアトピー性皮膚炎のイヌ27頭。
研究内容:シクロスポリンまたはグルココルチコイドに加えて亜鉛を追加投与。
結果:8週間投与にて痒みのスコア、アトピー性皮膚炎の重症度スコアの減少、治療薬を減薬することができた。
A double‐blinded, randomized, controlled, crossover evaluation of a zinc methionine supplement as an adjunctive treatment for canine atopic dermatitis
亜鉛が欠乏すると
ヒトでは成長障害、皮膚炎、免疫力低下、味覚障害などが挙げられます。
- 脱毛
- ヒフの潰瘍
- 皮膚炎
- 爪周囲炎
- 口周囲の潰瘍
- 被毛の成長遅延
- 二次感染 など
遺伝
長毛の小型犬に多い(トイプードルやポメラニアンなど)
シベリアンハスキー、アラスカン、マラミュートなど
拮抗物質の投与
カルシウム リン コバルト 銅
吸収阻害
フィチン(豆類に多く含まれる)
基礎疾患
肝疾患 糖尿病 慢性腸症 腎不全 など
手作り食
亜鉛濃度が低くなる傾向にある
亜鉛の多い食べ物
- 牡蠣
- レバー
- きな粉
- うなぎ
- 木綿豆腐 など
サプリ
国内の総合栄養食のドッグフードを摂取していれば、各栄養素の基準を満たしています。しかし、個体差による問題もあります。亜鉛欠乏になりやすい因子でもあげましたが、長毛犬の小型犬などは基準よりも亜鉛を必要としている可能性もあります。
また、経口から摂取した亜鉛の30%が吸収されるといわれていますが、加齢とともに吸収率も低下します。なので足りない分をサプリで摂取するのも良いでしょう。
まとめ
- タンパク質が90%以上を占めている。
- セラミドの細胞膜の成分は必須脂肪酸(オメガ6脂肪酸)である。
- ヒフのターンオーバーを促進するのが亜鉛とビタミンAである。
- オメガ6脂肪酸はヒフの潤いを保つのに重要な役割があり、オメガ3脂肪酸とのバランスが大事。オメガ6とオメガ3を同時に摂取することで炎症を抑える、免疫機能を高めるといった効果がある。
- 亜鉛は、新しい細胞を作る「細胞分裂」をサポートする働きがある。タンパク質の合成にも補酵素として働くほか、DNAの合成にも関わっています。また、炎症や傷の回復させるときにも使われています。
- ドッグフードで栄養の基準値は摂取できるが、個体差があるため別に補ってあげた方が良いこともある。
- 食べ物でも栄養を補えるがサプリで与えると効果的。
- サプリで与える場合は2ヶ月は続けてあげないと効果が出にくい。
さいごに
動物の身体は奥深いものです。そんな身体の「奥深さ」を理学療法士という視点、ペット栄養管理士、ファスティングマイスターという観点からわんちゃんとヒトを結びつけて、家族みんなが健康に!といったテーマでブログを書かせて頂こうと思います。
興味のある方は今後ともよろしくお願い致します。
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